カムイ
意識が蘇った時、体を長く横たえ手足は伸ばしていた。顔の周りの空気は暖かい。そして、着物も袴も、下帯でさえつけていないことに気付いた。
己の体に密着しているのは、女の肌だった。
女の顔は顎の下にあり、乳房が腹部に押しあてられている。手は背中へ回り、膝で臀部あたりを締めつけていた。己の一物は、女の腹あたりで萎びている。
体を動かすと、女は手と足を緩めゆっくりと体を起こし、目を覗き込んで、ニッ、と口を横にひいた。
そうして、ふたりの上を覆っていた熊皮から這い出ると、着衣を身にまとった。
なんと言えば良いのだろう。あの大木の根元から、ここへ運ばれて助けられたに違いない。
凍死寸前から蘇生させるには、娘の肌の温もりが最良の方法だとは聞いていた。
有難さと、恥ずかしさと。
「かたじけない」
やっとの思いでそれだけを告げた。
女は首をかしげている。言葉が通じないのかもしれない。
着衣はアイヌの着物だった。