カムイ
やがて、原生林が密生する場所に達した。
これで風から逃れることができる。
当てもなく、密林の中に踏み込んだ。
空腹ではあるが、眠気がより強く襲ってくる。
眠ることのできる場所を求めて、歩き続けた。
立ち止まっては木の皮をはぎ、噛みしだく。少しは腹の足しになるだろう。
長刀はすでになくした。あるのは、脇差しが1本。
最後の気力を振り絞り、脇差しを凍えた両手ではさみ持ち、大木の根元に穴を掘った。
ここしばらく降雪がなかったらしく、雪はよく締まっている。
脇差しの先を雪に叩きつけるようにして、穴を掘った。それでも少し掘ると、根の周りには空洞がある。
根元の雪を掻き出し、膝を抱えて坐って入れるほどの穴をあけると、剥いだ木の皮を敷き詰めて中に入り、穴の口を外套で塞いだ。
加代・・・、
夢うつつの中、加代に抱かれている己がいた。
加代がいるはずはない、ということが分かっていながら、加代の肌の温もりであってほしいという気持ちから、逃さぬぞ、と強く抱きしめる。
この心地良い温もりは、加代の体温だ。
満足した意識は、再び遠のいた。