カムイ
源三郎を見送ってしばらくすると、加代が訪ねてきた。
「ごめん下さいまし、飯田彦四郎様のお宅でしょうか」
「はい」と言って鈴が現れると、加代はしばらく見つめてから言った。
「あのぅ、どこかでお会いしたこと、ありますよね」
鈴は目をそらした。
「いいえ、どちら様でしょう」
「あ、申し訳ございません。わたくし、三宅、と申します。彦四郎様とは幼馴染でございます。彦四郎様は、御在宅でしょうか」
「あの、猟に出ておりまして、当分は戻りません」
「さようでございますか・・・あのう、主人、ごめんなさい、あの三宅源三郎、という者が、お伺いしましたでしょうか?」
「ええ」
「どうしました? 彦四郎様とお会いしたのでしょうか?」
加代は、鈴に取りすがるようにして、尋ねてきた。
「いいえ、猟に出ている場所を教えました。そこへ行かれたようです」
「私もそこへ参りたいと思います。馬車を待たせておりますので」
急いている様子の加代に猟に出ている場所を教えてから、鈴は馬を飛ばして、先回りしてきたのである。