小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カムイ

INDEX|150ページ/160ページ|

次のページ前のページ
 

 源三郎は刀を抜いた。カムイは目を細めて、視線をじっと源三郎に当てている。腰には、チニタが残してくれた山刀を差していた。だが、じっとしたままで動かない。
「抜け! 私を侮辱するつもりか? 私にも人は切れるぞ」
 カムイに刀を抜かせるつもりで大きく振りかぶって、切りつけていった。だがカムイは、無言で体を避けただけである。代わりに弓を手にした。

 幼少のころより遊び友達でもあった源三郎は、学問一筋で青春時代を送っていた。少年のころには、同じ剣術道場に通っていたのだが、稽古仲間からはその下手さ加減をからかわれて、時には竹刀を突きつけられて泣いている源三郎を、カムイこと彦四郎が、いつも助けていたのである。
 源三郎を取り囲んでいた連中を、竹刀で叩きつけて怪我を負わせたこともあり、それ以来、乱暴者、として見られるようになっていた。
 
 何度か、源三郎は刀を振り抜いた。その度にかわされるだけで、カムイは刀を抜こうとはしない。
 カムイは、見抜いていた。
 源三郎は、自らの命を絶とうとしているのである。カムイにわざと切られようとしている。それが、加代と彦四郎が一緒になる良い方法なのだ、と考えていることを。
 だがそれは実際には、周囲の者を不幸にするだけであり、誰の為にもならないことに気付いていない。それほどまでに、思慮深いはずの源三郎は思いつめ、悩んでいたのだ。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実