カムイ
馬に乗って訪れて来た男は、三宅、と名乗った。
「飯田彦四郎君は、在宅しておりましょうか」
「あいにく、猟に出ておりまして。2、3日は戻ってこないかと思います。いえ、そう遠くではないんですが・・・お急ぎなら、馬で3時間ほどかけていただけたら、そこへ行くことはできます」
思案顔の男に、続けて言った。
「帰って来るまで、お泊まりいただいても結構ですよ」
「急いでいますので、会いに行きます」
鈴はその場所を教えて、遠ざかって行く後ろ姿を見送っているうちに、三宅、という名を思い出していた。
「加代さんは、確か三宅、と言ったはずだ」