カムイ
「文左!」
カムイが駆けつけた時、仁王立ちになっていた文左衛門はカムイに向かって、ニヤリ、と引きつった笑顔を見せると、言い聞かせるかのように、重厚な声をしぼり出した。
「最後、に・・・武士・・・魂・・・という、ものを・・・見せて、やろ・・・う、な」
どこにそれほどの力が残っていたのかと思えるほどの気力を集めて、「デヤ――ッ」という高らかな気合を発すると、目にもとまらぬほどの速さの、見事な剣さばきを見せた。
そして体を半開きにし、刀を目の高さで水平にしたかと思うと、男の喉を突き刺して斃していた。
すぐに刀を引き抜こうとしたのだが、その間に別の男が、隙を見せてしまった横腹を突き抜いた・・・その刃を素手で掴んだまましばらく鬼の形相で佇んでいたが、やがて口から血を溢れさせると、膝を折るようにして地面に倒れ込んだ。
「文左!」と駆け寄ろうとしたが、横合いから刀が振り下ろされたために体をそらして刀で受け止め、力を込めて押し返すと同時に向きを変えると、ふたりの敵との間合いをとって下段の構えをとった。
文左衛門を刺し殺した男は、死んだ仲間が落とした刀を拾い上げて駆けつけて来た。
怒りに満ちた凄まじい形相で彼らを睨み据え、前後・左右、小刻みに足を動かした。