小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カムイ

INDEX|137ページ/160ページ|

次のページ前のページ
 

 襲撃があったのは、翌日の早朝、薄明の頃である。
 朝に食する野菜を取りに畑に入っていた文左衛門が、森の中からモクモクとわき上がっている白い煙を認めて、家に駆け入った。

「おいっ、いよいよ始まったぜ。奴ら、火を付けたらしい」
 文左衛門から受け取った『村正』を膝の横に置き、火を熾していたカムイは、すぐに火に灰をかぶせた。
「名刀でも、勘蔵が持っている時は、ただのなまくら刀だ。だが、持つべき者が持てば、生きてくる。お主にぴったりの刀だ、使ってくれ。アイヌの刀より日本刀の方が、人を切るには、適しているだろうから」
と言って与えられた、銘刀・村正である。

「分かった。ほれ、握り飯だ。鈴が作り置いてくれていた。長丁場になるだろうから、まずは腹拵えだ」
 文左衛門は、自室から瓢箪と升を携えてきた。
 透明の液体を、升になみなみと注いでカムイに渡した。
「出陣の戦勝を願う酒だ。ほれ」
 文左衛門は、瓢箪を大きく傾けて2回喉を鳴らした後、最後に口に含んだ酒を、鞘から抜き放った刀の刃を目の前に立て、プーッ、と全体に吹きかけた。それをじっと見つめて祈願した後懐紙で拭い、目元を緩めると鞘に戻した。

 ふたりは、悠長に朝飯を食らっていたわけではない。酒を飲み干すとお握りをほおばりながら、闘いの準備を速やかに進め、矢は背に負い、腰に刀、弓を手に取り馬を引いて走った。
 馬は、前夜から家の裏に繋いでいた。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実