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カムイ

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 矢を作りながら、そしてそれで猟をしながら、追分にある我が家を目指した。ゆっくり、ゆっくりと。すでに雪は深く積もり、そして堅く締まってきている。
 動物の足跡に、頻繁に出くわすようになった。

 名を知らない、標高の低いありふれた山の麓に差しかかった時、うっすらと新しく振り積もった雪の下に、熊の足跡を見た。
 足跡の大きさからみると、7尺(約2.1メートル)は超える体長の、羆(ひぐま)に違いない。
 カムイの体は、それを撃ち止めたくて、うずうずとしてきている。
 熊は神からの使者である。その身体を押し頂くことによって、神の加護を得、神と会話をするのだと考えられている。
 足跡を追った。それは、山に向かっている。
 
 今手にしている弓は、鈴が届けてくれた物ではあるが、チニタが残してくれた物だ。熊を射抜くための強さは、十分に持っている。
 問題は、矢、だな、と考えた。
 だが、時間を掛けて良い矢を作っている余裕はない。それでも今、あきらめたくはなかった。
 山に分け入った。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実