カムイ
やっと3匹のウサギを仕留めたカムイは、皆が出払って誰も家にいない頃合いを見計らい、加代の住む家の上がり框に、それらを置いて出てきた。
前庭に干してある衣類から、女の子が増えていることが分かる。
女々しいような己の行動に苦虫をかみつぶしたような表情になって、いったい自分は何をしているのだろうか、と自問した。
私にも、子供がいるのだ。そうだ、ふたりだ。鈴はひとりで、子供たちを養育しているはずだ。
月を始め馬たちの世話も、鈴が続けているに違いない。
すべて、自分が始めたことではないか。それを結果的には、鈴に押しつけてしまっているのではないだろうか。
帰ろう、そうして、鈴と共に生きていくんだ。私には家族がいる。
きっと、私の帰りを待っているに違いない。
いや、待ってくれているのだろうか。私を憎んでいるのでは、ないだろうか。
雄作が最後に言った言葉・・・余市へ行くのか? その女、鈴に似ているそうだな・・・。
やはり鈴は、加代と出会っていたのに違いない。どのように思ったのかは分からないが、それが原因で、私の居場所を警察に知らせたのだろう。
にもかかわらず、私は未だに、加代を忘れられないでいる。
鈴に対しても同じように、いや今はきっと加代以上に、惚れてしまっていると思うのだが。
加代に対するこの気持ちは、どうしようもないではないか。
鈴の存在と同じように、加代が存在していることが、加代を思い続けることが、私の生きがいでもあるのだから。
私は、鈴を幸せにしたいと思う。鈴が愛(いと)おしい。鈴にはいつも、笑っていて欲しい。鈴の笑顔を見ることで、自然と活力が湧いて来ていたではないか。
・・・私の居場所に・・・帰ろう。