カムイ
しばらく佇んであたりを見渡していたカムイは、畑で働いている老女を見つけると、そばまで近寄り声をかけた。
「もし、この地に、三宅、と申される方はおられましょうや?」
「元家老の三宅様、じゃろうか」
「さようでございます」
振り返って、カムイを一瞥してから立ち上がった老女は、手を上げて高台にある1軒を指し示した。
「ほれ、あそこに見える端から3軒目がそうじゃが。ご夫婦とお子様とで、お住まいになっておられますわい」
加代さんは、ご家老とそして、ご母堂とこの地に渡ってこられ、一緒に住まわれているのか・・・ああ、早く会いたい、と気が急き、走るようにして高台へ向かって行った。
数軒立ち並ぶ小屋の前で、立ちすくんだ。
会津の屋敷との落差があまりにも大きいことに、今さらながら、わびしさが込み上げてきたのである。
このような簡素な小屋で、冬を越してきたのか。この地の寒さは会津の寒さどころではない。会津ほど雪が積もらなくても、海から吹きつける大陸からの風はすさまじく、すべての物をたちまちにして凍らせてしまう。