カムイ
雄作は、社長の椅子にどっかりと腰かけると、背もたれに背を預けて上を仰ぎ、「フゥゥ――ッ」と深いため息をつき、石の直撃を受けた腕を服の上から押さえている。
床には、ガラス片や石炭が散乱し、いたるところ黒く汚れていた。
手に持っている弓矢を元あった場所に戻して、部屋を出ていこうとすると、コンコン、と入口の扉を叩いて、専務が箱を片手に下げ、もう一方の手に帳面を持って現れた。
「遅くなり申し訳ございません。社長、傷のお手当を」
袖をめくられた雄作の腕は紫色に腫れあがり、顔は炭の色で黒く、ところどころには血が滲んでいる。「他にはございませんか」と尋ねながら、専務自らが箱から薬を取り出して手当てを済ませていくと、直立して帳面を差し出した。
「これが、人別台帳です。死んだ者をすぐに確認させて、墨で名前を消しておきました。ざっと、21名になります。負傷者の数は、まだ分かりません。社員総出で、後始末に当たっております」
「御苦労。よろしく頼んだぞ。それらが終わったら、みんなをねぎらってやってくれ。ああ、警察への対応は?」
「後日、私が伺うということで」
雄作がうなずくと、専務は人別台帳を机の上、雄作の前に置き、カムイにチラ、と視線を走らせてから、頭を下げて部屋を出て行った。