カムイ
建物に向かって、投石が始まった。
大きな音がすると窓ガラスにクモの巣状のひびが走り、次には粉々に砕け散って、ガラス片が部屋の中に散乱した。
大方のガラスが割れ落ちると投石は止み、駆け寄って来た者がツルハシを窓枠に引っ掛けて、はずそうとしている。
近くから再び投げられた石は、部屋の中に置いている物に当たって壊したり、傷つけたりして散らばっていった。
雄作は窓の内側に身を隠して、投石している群衆に向かって発砲した。銃を持っている社員はそれを合図として、各部屋の窓からも発砲を始めた。
窓枠をはずそうとしていた者を銃の台尻でこづき倒すと、誰かがその者の頭を撃ち抜いた。
体を撃たれて、次々と倒れていく。それでも、興奮した群衆の投石は止むことがなかった。
カムイは窓枠の、雄作の向かい側に立つと、手首に狙いを定めて続けざまに矢を放っていった。
矢は、石を持つ手を射抜いていく。射られた者はすぐさま矢を抜き、手を押さえて呻きうずくまっていった。
そうして、投石は止んだ。
雄作は、窓から上半身をさらけ出し、群衆に向かって、も一度声を張り上げた。
「無駄な抗争は辞めろ! 命をむざむざと、捨てるでない!」
「ヘッ! 命をむざむざと捨てさせてるのは、オメェたちだろが! 見えすいた綺麗ごとを、並べてるんじゃ、ねェ!」
そだそだ…………、ワイワイガヤガヤと一帯は騒然となり、再び投石が始まった。
そこへようやく、ふたりがかりで戸板をかかえ持った警察官たちが次々と到着し、群衆は警官の撃つピストルの音に逃げ惑いながら、三方向から迫ってくる何枚もの戸板に柵門内に追いたてられていき、錠が降ろされた。