カムイ
「社長! 大変です! 暴動です。手に手に武器を持って、こちらにやって来ます!」
「社長、早く逃げてください。ここは我らで食い止めます。こっちには銃がありますから、銃で応戦します」
「すでに監視たちは、とっ捕まえられて身動き出来ない状態にあるらしく、暴動を押さえ込む方策がありません。武力に頼る以外には」
次々ともたらされる報告は、状況不利なものばかりで、手の施しようがないほどに群衆は膨らみ、怒りが発散していた。
「いや、私が出ていって、彼らの代表と話し合ってみよう。その間にだれか、馬をとばして援軍を要請してきてくれ」
2頭の早馬が出て行くのを見送ってから、雄作は銃の装着を点検し、それを部下のひとりに預けると、共に表に出て行った。
他の社員たちは、広場に面した部屋の窓から銃身をのぞかせている。彼らは、「私が合図を送るまで、撃つな」と言われている。
炭鉱から事務棟に続く道を埋め尽くした群衆の先頭には武器を提げ持った者、後方では投石代わりに使う石炭の入った車を押す者と、その周りを多くの労働者が取り囲み、広場を横切って建物の方に近づきつつあった。