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カムイ

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 一般に炭鉱では、敷地内にある土工部屋は、家族向けの棟割り長屋と単身者用の大部屋とがあり、自らの意志で土工夫となった信用部屋と、周旋屋の手を通じて集められた者の部屋とに区分されていた。周旋屋を通じた者たちは、多額の前借り金を背負っており、より厳しく部屋に拘束されることとなっている。
 それらとは別の扱いで、囚人用の大部屋(監獄部屋)が作られていた。
 ただ1箇所の出入口はいつも施錠され、番台で不寝番が見張りをし、正面の土間を挟んで生活をする部屋と、帳場、日用品販売の売店、親方の部屋などが配置されていた。
 
 一応彼らにもわずかの給金が支払われていたが、カスリと呼ばれる、頭や小頭が上前を撥ねる制度があり、売店で扱っている物は法外な値段が付けられているため、手元にはほとんどお金が残らなかった。
 つまりは、頭たちの勤労意欲を高めるための、囚人への給金だったといえようか。
 給金は私幣による切符制で、3割の両替料で現金に換えられる。切符が通用するのは、炭鉱直営の売勘場か指定商店での買い物に限られていた。それは、囚人には関係のないことではあるが。
 
 ここ幌内炭鉱では、米の飯だけは十分に用意されていた。昼には、お握りが現場に届けられる。それ以上の物は、売店で各自が買うことになっている。
 それらのことだけをみると、集治監にいた時よりも良い環境にいるかのように思われるが、陽の光を浴びない日々が続くと、肉体だけではなく、精神状態にも異常をきたしてくるものである。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実