カムイ
逃げた者たちは、山の中で四方八方に散らばっていたが、犬に追いつかれると、持っていた木切れでその犬に打ちかかっていく。だが十分な食べ物を取っていない彼らには、犬と闘うだけの体力は残っていなかった。
犬は咬みつくだけでなく、肉を咬み切るほどの訓練を受けており、その牙に掛かった者は、血だらけとなって倒れていった。
刑務官に見つけ出された者は射殺され、その場に遺体は放っておかれた。彼らは、犬に咬まれてまだ生きている者も含めて、獣たちの餌となるのである。
逃亡に成功した者は、ひとりとしていなかった。
その無慈悲で残虐な扱いを知らされて、残ったすべての囚人は震撼となり、加わらなかったことに安堵の吐息をついたのである。
獄舎に戻された後、同じ部屋から逃亡者を出していた者たちは、ひとりずつ尋問を受けた後、その日の食事は抜かれた。連帯責任を問われたのだ。
普段から十分な食べ物を取っていない彼らは重労働を課せられ、アバラが見えるからだで、明日の我が身を嘆いた。
果たして明朝、無事に目覚めることが出来ているであろうか、と暗い気持となって、またあきらめの境地の中で、寝に就く毎日である。