カムイ
「おっと、歩けるのか」
カムイは自分の荷をその場に下ろし、腰をさすり続けながら戻ろうとしている男の体を支えてやって、「ここでしばらく」と自分の荷の上に座らせた。
「とっつぁん、あんなこと言って、いいのかい」
「ああ、ありがとよ。おかげさんで、少ぅし休むことが出来た。お上の人間はな、金と女にゃ弱いからな。もう、慣れっこでさ、ちょこちょこっと、一筆書いてやるだけで」
カムイは、男の背負っていた袋を道の端まで引きずっていくと、ひっくり返して空にした。
驚いて口をあんぐりと開け、カムイの行動をポカ〜ンと見ている男の背に、空になった袋だけをあてがってやると、自分の荷を、フッッンッと気合を入れて背負って、男を歩かせた。すぐ後ろに付いて、腰を折るようにして歩く男の歩調に合わせて、ゆ〜っくりと歩いた。
ひっくり返した石は、すぐに引き返して運ぶつもりだ。
監督官は、その行動を仏頂面をして見ていたが、おそらく、見ていなかったことにすると思われる。