カガミノカギ
俺はこいつらがどういう経緯でここにあるかと思うと、苦笑いを隠せなかった。
試しに二輪にガソリンを満タンにして、大阪まで行ってみる。誰も居ない高速道路を料金も払わずにぶっ飛ばして、向うのカガミから外に出てみると、横浜の自宅を出てから十分少々しか掛かっていなかった。四輪車ならもっと早いだろう。
これなら日本国内どこに行くにも三十分あれば着くだろう。橋の掛かっていない北海道だって、電車のトンネルを通れば良いのだ。
親父の日記によれば、横浜港の一番便利な桟橋に中型のクルーザーを繋留しているらしい。
帰りは一般道をゆっくり流して帰った。
そして道頓堀の近くの屋台で買ったたこ焼きを頬ばりながらあれこれと考えた。
そして数日後、俺は勤め先に辞表を提出した。
もともと、いい加減な親父に反発して堅い仕事をと思って入った公務員の仕事だった。
数ヵ月後……。
俺は真っ昼間の誰も居ない高速道路を愛車の黒いフェラーリで飛ばしていた。
勿論新しい任務の為にだ。
助手席のバッグの中には某企業の重要機密書類が入っている。こいつをクライアントの指定した相手に届けるのだ。
そう、俺の選んだ仕事とは超高速の宅配サービスだ。
FAXやメールで送れない重要書類や品物は結構有るらしく、依頼は順調に増えている。