カガミノカギ
一回で十数万円の謝礼を貰うのだが、実費はガソリン代だけなのでボロいといって良い程の稼ぎになった。
親父の真実が解かった今もどこか反発する気持ちが有ったのかも知れない。素直に親父の跡を継ぐ気にはなれなかったのだ。
世のためヒトのためと言いながら、結局一番身近な自分の家族を犠牲にしてきた親父。
そんな男にだけはなりたくなかった。
一仕事を終えてクルマをガレージに入れ、食事でもしようと外に出た。例の鍵を指先でくるくると回しながら横断歩道を渡るとき、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んできた。
急ブレーキの音。
跳ね飛ばされた瞬間、指先を離れた鍵がキラキラと光を反射しながら、歩道の方へ飛んでゆくのが見えた。
その瞬間、俺は全てを理解した。「カガミノカギ」の意味を。「光に向き合う者」の意味を――。
私欲に走った俺は制裁を受けたのだ。
つづく