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あなたが好き

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 あの場所まで…あとわずか。
 駐車場の端から車が一台、そして一台、私の視界に入ってきた。
停車してある車を全て見渡せるようになっても男性の車は見当たらなかった。
ときめいた心に圧し掛かる付加は何だろう?
 そのまま、書店の中に立ち入った。
見渡す限りには、男性の姿は見つけられない。
本を探す振りをして 本棚の間を捜しながら歩いた。
雑誌の棚。実用書の棚。漫画の棚。児童書の棚。単行本の棚。
(あれ?)
単行本の棚の前に手帳が置いてある。また誰かの忘れ物だろうかと私は近づいた。
 手帳のの前に来て、そこのメモが挟まれているのがわかった。
見て良いものだろうかと思いながらも目はその文字をなぞる。
『約束した君へ』
(私のこと?)
私はずうずうしくも好奇心にメモの挿まれた部分も開いて見てしまった。
『見つけてくれてありがとう。駐車場で待っています』
私は、手帳を取ると胸に抱え、書店を出た。
(人違いなら、謝ればいいわ。でもきっとそう!)
駐車場に待つ人は、いない。からかわれているような気持ちになってきた。
「こんばんは」
背後から声を掛けられ振り向くとそこには、その男性が立っていた。
「あ……」
私は、頭を下げることだけで精一杯だった。
「手帳を置いた途端に見つけられたので、僕のほうが出遅れました」
「はあ……」
「また会えましたね」
「こんばんは」
「こんばんは。何処か食事に行きますか?」
男性は、車のロックを外し、ドアを開けた。
わからないはずだ。昨日と車が違っていたのだ。
「どうぞ」
私は、自然の流れのようにその車の助手席に腰掛けた。
ドアを閉め、運転席に乗り込む男性を目で追って見ていた。
「何処へ行きましょう?」
「あ、あの」
「はい、何ですか?」
「少し、ドライブしませんか?良ければですけど」
「いいですね、ドライブ。何処に行きましょう?」
「あ、何処がいいかな……」
 男性は、エンジンをかけるとシートベルトをするようにと身振りをした。
私は、左上から肩にシートベルトを掛け、金具を留めた。
「今日は、できましたね」
「はい」
何となく、ふたりは笑いあった。
 駐車場を出るところの段差で身体が揺れた。
シートで少し踏ん張っている私をちらりと見るとまた前に向き直ってウインカーを出した。
昨日とは反対方向へと車は走り出した。
「あの駐車場、もう少し考えてくれるといいんですけどね」
「そ、そうですね」
私は、俯いたまま、答えた。
作品名:あなたが好き 作家名:甜茶