小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

あなたが好き

INDEX|6ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

 入店十五分後。
 食事の品々が出始め、その料理の話に移るまで、出会ったことの偶然と必然にまで話が及びそうだった。
「わあ美味しそうですね」
「そうですね。好き嫌いや食べられないものってあるのですか?」
「食べたことのないものはわかりませんが、今までで食べられなかったものはなかったかな」
「それは、幸せですね。あ、僕は苦手なものはあるなーどうしても食べろと言われたら食べはすると思いますが」
「まあ私は、食べたいものしか食べてないんですけどね」
「なるほど、それは正解ですね」
「無理しなくたっていいのに」
「そうなんですが、断れないこともあるんですよ。でもこれからは『無理です』って言います」
「え?どうして?」
「貴女が無理しなくていいって言ってくれたから」
「私なんかが言ったからって」
「じゃあ、僕に適当に言っただけですか?」
「そんな……」
「この料理をふたりで食べることになったことは素敵な…んーまあ偶然としておきましょう。いかがですか、味?」
「美味しいです。ここの店知らなかったし」
「この店ともいい出会いだったとなれば、誘って良かったです」
(何だか、面倒なものの言い方する人だなぁ)
 そんなことを頭の片隅で思いながらも食事は、美味しかった。
もっと緊張して(味なんてわからない)なんてことを思うかと思ったのは先日見たドラマのせいだろうか。
 「あの、失礼は承知でごめんなさい。いつもこういうことされるの?」
「こういうことって、食事に誘うことですか?」
「ええ、まあ」
「僕だって第一印象や一目惚れはします。誰も彼もなんてことはしませんよ。そういうふうに見られましたか?」
「…ごめ…」
「貴女は、そういう男に着いてきたのですか?そんなふうの人なの?君…」
私は、返す言葉を飲み込んだ。
「あ、ごめん。言い方が失礼でした」
「いえ」
「僕は昨日書店のカウンターでの貴女の態度に興味と好感を持ちました。だから本棚の所を探して声を掛けました」
 私は、顔を上げ、男性の目を見た。
恥ずかしいくらい真っ直ぐに見られていながらも 嫌ではなかった。
「今日のことだって、特に断られなかったと思うのですが、嫌でしたか?」
「そんなことありません!」
自分の出した声にはっとして、周りを隠れ見た。
幸い、誰も見ている様子はなく、ほっとした。
「良かった。じゃあ今夜のこの時間を楽しみましょう。冷めちゃいますよ」
「そ、そうですね。本当に美味しいです」
男性の様子を時々眺めながら、私はその料理を口に運んだ。
(私、今 何考えているんだろう?ま、いっか。このまま。このまま……)
作品名:あなたが好き 作家名:甜茶