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エレベータの中、こつこつと傘で床を突く。





　手に握るのは赤い傘。



　コンビニ傘はダサすぎるからイヤだ、と駄々を捏ねた彼女へシンジが自腹を切って買ってきた物。



　反対の手には、その時自分用に一緒に買ってきたらしい紺色の少し野暮ったい傘が握られている。



　その双方を見比べて、アスカはやけに緩んだ表情を浮かべた。



　エレベータが止まる。



　ロビーに出てすぐ、彼女は呆然と外を眺めた。



　道路脇の水流は上から見たものより遥かに流れが速く、範囲も広い。



　一瞬『やっぱり止めようか』という思いが頭をかすめ、握る傘へと視線が落ちる。