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私を泣かせてください

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「まあ、こちらとしても重田君には何とか復帰してもらいたいと思うよ。そのためにも君が部下に対する態度を変えてくれなくちゃ。これ二つ目の問題点ね」
「部下に対する態度ですか?」
 由美子は韮山の顔をまじまじと見る。韮山は少しバツが悪そうに視線をはぐらかしていた。
「いやなに、総務にも君の苦情が上がってきているんだよ。パワハラだってね」
「そ、そんな……。ただ私は良い雑誌を作りたいだけです。安穏としていたらシェスは他の雑誌に抜かれてしまいますよ。私がシェスを引っ張り、育て上げているんです!」
 由美子は声を荒げた。由美子の唾が飛んだのだろうか、韮山の顔が歪んだ。
「まあ、君の才能は買うよ。でもね、一人相撲はいかんよ。シェスは君の私物じゃないんだからさ。それと、重田君と連絡を取って、受診に同席して、主治医の意見を聞いてきたまえ」
 由美子は「はい」と言うしかなかった。
 由美子はいつもがむしゃらだった。こと「シェス」の編集のことになると、他人には任せておけないのだ。それは多大な熱意に裏打ちされたものなのだが、だからこそいつも部下に口やかましく言ってしまう。由美子自身は今まで気にも留めていなかったが、部下を叱る時の口調など相当きついものがあった。そのことを韮山に指摘され、今までの自分の歩んできた道を振り返ってみる。才能で得た編集長と言う肩書きと立場に満足はしているものの、確かに部下との交流は少ないと思う。
(私のことを慕ってくれている人っているのかしら?)
 そんなことを思うと、急に目の前が暗くなった。由美子はその日、残業もそこそこに帰宅の戸についた。

 シャワーを浴びた由美子はバスローブのまま、缶ビールを煽った。キッチンのチェアーに腰掛け、「ふう」とため息を漏らす。
 今日、韮山に言われたことは由美子にとってもショックだった。
 由美子にしてみれば、部下たちが拙い記事しか書けないので、仕方なくリライトしているつもりだった。
(やっぱり、私の苦情、相当来てるのかなぁ……)
 肴もなしに由美子は二本目のビールに手を伸ばす。由美子にはわかっている。部下を叱責する際、必要以上に追い込んでしまうことを。時にはヒステリックな金切り声を上げ、相手が反論できないまで追い詰める。そんな自分を自覚してはいたが、どうしても部下の甘い仕事振りを見ては、感情が先に走り出てしまうのだ。