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天つみ空に・其の七~恋月夜~【最終章】

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 渾身の力で抗ってみても、清五郎の力は強く、ビクともしない。清五郎は居間を横切り、無造作に次の間へと続く襖を開ける。閨には五つ重ねの絹布団が整然と敷かれている。純白の絹布団を重ねた上に、血の色を彷彿とさせる緋色の掛布団が一枚。
 お逸は清五郎に抱えられ運ばれながら、絶望的な想いでその血の色を思わせる紅い布団を見つめた。
 荷物のように背中から布団に落とされたかと思うと、清五郎が即座に覆い被さってくる。
「いや―、いやっ」
 清五郎は唇を重ねようと執拗に迫ってくる。お逸は、烈しく首を振って拒んだ。
 清五郎は舌打ちを聞かせると、お逸の襟許を両手でぐっと一挙にくつろげた。
 ピリッと衣の裂ける嫌な音がした。
「あっ」
 お逸は悲鳴を上げた。大きくひらいた襟元から、白い乳房が見え隠れしている。小さいけれど、形の良い二つのふくらみが桃色の頂きを乗せて、ひっそりと息づいていた。
「きれいだ―」
 清五郎が恍惚とした表情で見つめる。
 すかさず清五郎の顔が近付き、その桃色の先端を口に含まれた。最初の一瞬は何が起こったのか判らず、お逸は茫然とする。
 ややあって、男の頭が自分の胸の上にあることに気付き、絶望的な声を上げた。
「止めて、止めてえ」
 夢中で手脚を動かそうとしても、身動きすらままならない。生温い口で乳房を吸われ続け、涙が止まらない。あくまでも抵抗しようとするお逸に腹を立てたのか、ふいに乳首を咬まれた。
 痛みは一度ではなく、二度、三度とお逸を襲う。
「痛い―!」
 新たな涙がまた溢れ、白い頬をつたう。
 清五郎が帯に手をかけた。前で簡単に結んだだけの帯は呆気なくするすると解ける。
 清五郎の手が捲れ上がった襦袢の裾を割って中に忍び込んできた。
 お逸は泣き叫びながら、救いを求めるように手を差しのべた。
―真吉さん、真吉さん。助けて、私、嫌なの、嫌なのに―。
「お逸、良い加減に諦めろ。今宵、私はお前を娼妓として買ったのだ。ここの楼主にももう礼金はたっぷりと払ってある。幾らお前が泣き叫んだって、誰も助けに来やしない。お前は観念して、大人しく私に抱かれるしかない」
「そんな、酷い」
 お逸は潤んだ眼で清五郎を見上げた。
「私は遊女ではないのに、どうして」
「あの楼主は、とんだ食わせ者だぞ。たまたまこの見世に迷い込んだお前を娼妓に仕立て上げ、これから花魁として売り出そうと算段までしてやがる。私はそのお陰で、振袖新造の突き出し(水揚げ)と同じだけの金をあいつに巻き上げられた。もっとも、お前が初めて男に抱かれる生娘だとは誰も思っちゃいねえがな。真吉とさんざん寝た後の使い古しを抱くのに水揚げ料を取られるとは、何とも割の合わない話だぞ」
 あまりといえばあまりの残酷な科白に、お逸は身を震わせた。ここまで悪し様に罵られ、最早、抵抗する気力さえ萎えた。ぐったりと力を失ったお逸の身体を清五郎は容赦なく蹂躙してゆく。
 虚ろな瞳には最早、涙さえ浮かんでこない。
 すべての感情が麻痺してしまったかのようだ。ただ男に犯されるだけのお逸は意思を失った人形のように布団に横たわっていた。そんなお逸を清五郎は簡単に扱った。お逸の腰に両手を添え引き寄せると、両脚を高々と持ち上げ、大きく開かせる。
 お逸は何か熱い塊が下腹部に押しつけられるのをぼんやりとした意識で感じた。次の瞬間、形容しがたい痛みがお逸を貫いた。
「あっ、ああ、痛い―ッ!」
 お逸は嫌々をするように首を振り、大粒の涙を溢れさせた。
 あまりの激痛に、お逸は逃れたい一心で清五郎の胸を両手で突き飛ばした。
「邪魔をするな、まだ半分も挿ってはいないぞ」
 その言葉が何を意味するのか判らぬままに、お逸は清五郎に両手を持ち上げた形で帯で纏めて縛められた。
「あーっ」
 お逸の眼からとめどなく涙が溢れ、零れ落ちる。一挙に最奥まで貫かれたお逸は、痛みと衝撃にか細い身体を大きく弓なりにのけぞらせた。
「お逸、お前―、真吉とはまだ寝ていなかったのか」
 清五郎の声は何故か嬉しげだ。
 清五郎の大きな手がお逸の頬を包み込んだ。
「お逸、やっと私のものになったんだな」
 清五郎の身体がお逸の下で緩やかに動き始める。再び、耐え難い痛みがお逸を襲った。
 清五郎が突き上げてくる度に、お逸の下半身に怖ろしいほどの痛みが生じる。まるで一カ所を引き裂かれているような、滾り切った熱い棒でかき回されているかのような痛みだ。
 お逸の唇からはか細い悲鳴が間断なく洩れ続けた。その一刻後、お逸はあまりの苦悶と痛みにとうとう意識を手放した。それでも、清五郎は気を失ったお逸を朝まで容赦なく貪り続けた。

     《其の弐》

「お逸、お逸?」
 誰かが呼んでいる。
 お逸の意識はゆっくりと水面から浮かび上がるように覚醒した。重い瞼を無理にこじ開けると、おしがの気遣うような顔が視界にうっすらと映じた。
「大丈夫かい」
 おしがに手を掴まれ、お逸は小さな悲鳴を上げた。一瞬、清五郎の乱暴な腕を思い出したのだ。
「いやっ、止めて」
 狼狽えて身をよじって逃げようとするのを、おしがが両手で抱き止める。
「お逸、落ち着くんだよ」
 それでもなお抗おうとするお逸の耳許でおしがが囁いた。
「あたしだよ、やり手のおしがだ。大丈夫だ、もう、伊勢屋の旦那はお帰りになったから、何も怖がらなくて良い」
「あー」
 お逸が硬直したように身を強ばらせ、おしがを恐る恐る見た。
「起きられるかい?」
 改めて問われ、お逸は身を起こそうと身体を動かす。が、途端に腰から下腹部にかけて激痛が走り、小さな呻き声を上げて蹲った。
「ああ、そんなに急に動いちゃ駄目だ。ゆっくり、そっと起きてごらん」
 言われるままに、上半身をゆっくりと起こしたが、それでも下半身の痛みは少しも変わらなかった。まるで身体中が悲鳴を上げているように痛みを訴えている。
「昨夜はお勤め、ごくろうさん。マ、初めての夜を過ごした翌朝は誰でもこんなもんさ。これから身体を洗ってやるから、ゆっくりで良い、湯殿に来るんだよ」
 おしがはお逸にそっと手を差し出すと、その手に掴まらせて立ち上がらせた。
 階段を降りてゆくのにもいつもの倍以上の刻をかけ、身体を動かす度に痛みに軋む身体を労りながら漸く湯殿に辿り着く。
 おしがが気を利かしたものか、湯殿には誰もいなかった。以前はまだ他人に裸身を見られたくないという意地があったけれど、今日は最早、羞恥心も何もあったものではなかった。というより、お逸自身、あまりに烈しい痛みに苛まれ、他人の助けを借りなければ到底、歩くこともままならないほどの有り様だった。
 清五郎はそこまで徹底的にお逸の身体を責め苛んでいったのだった。
 お逸は、おしがに緋縮緬の襦袢を脱がせて貰い、湯殿に入った。湯殿の中は、もうもうと白い湯けむりが立ち込めている。その乳白色の靄を通して、お逸の白い儚げな裸身が浮かび上がっていた。
 おしがは、その白い肢体に刻まれた幾つもの紅いアザを黙って見つめた。浴槽に身を沈めるのにもおしがに支えて貰わねばならない。身体が温まると、白い身体中に散った汚辱の烙印が紅い花びらのようにひときわ際立つ。