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再び桜花笑う季(とき)

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8.夢



−その夜、私は夢を見た。
夢の中では何故か、穂波がさくらにあやされて笑っていた。

そして、それを見ていた私はいつしか涙を流していた。それに気付いた穂波は私に駆け寄り、
「パーパ、めぇよ、めぇよ。」
と言う。泣くなと言いたいのだろう。
「そうだね、泣いちゃダメだね。」
と返すと、穂波は
「いーこ、いーこ。」
と言いながら私の頭をなでた。それから、私の頬に自分の頬をぐりぐりと押しつけて笑った。かつての日、翔子が「しゅきしゅき(好き好き)」と言いながら穂波にやっていたことだ。穂波はそれを、次にさくらにも同じようにしたのだ。さくらはびっくりした後、笑みをこぼした。

その時、少し離れた所から声がした。
「穂波ちゃん。」
見ると、向こうの方で翔子が穂波を呼んでいた。穂波は弾かれるように母親を見た後、私に向き直り、
「バァバイ。」
と回らぬ舌で私に別れを告げると、引き留めようとする私の手をすり抜けて、翔子の許へ走り去った。
そして、もう一度屈託のない笑顔を私たちに向けると、
「バァバイ。」
と手を振った。
そこで、私は目覚めた。朝の光の中、穂波の別れの言葉が私の耳に確かに残っていた。

翔子、穂波…パパは、許してもらえたと思って良いのかな。