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戦国野球

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先発メンバーが発表された。先攻【伊達】チーム1番三塁手後藤、2番二塁手小梁川、3番中堅手留守、4番一塁手片倉、5番左翼手白石、6番遊撃手原田、7番右翼手支倉(はせくら)、8番捕手茂庭、そして先発投手は桑折(こおり)。濃いブルーを基調とし、金色がまじる甲冑。兜には三日月という派手なコスチュームで人気も高い。

後攻【織田】チーム1番中堅手細川、2番遊撃手明智、3番二塁手柴田、4番一塁手佐々、5番右翼手池田、6番三塁手蒲生、7番左翼手稲葉、8番捕手前田、投手滝川。こちらは黒を基調とし、橙色が効果的に入っている甲冑。兜にはモヒカンを思わせる鳥の羽根がおしゃれな感じだ。

様子見なのだろうか、初回は両チームとも無難に三者凡退で終えた。さあ、2回はチームの顔といえる4番から始まる。伊達チームの片倉は体力気力ともリーグを代表する打者だ。滝川が力を込めて投げた球は片倉の顔面に向かって行った。ああっと固唾を飲む観客、しかし片倉は少しだけ頭を後ろに移動させ、目の前ギリギリに過ぎて行く球を何事もなかったように見送った。のけぞらせておいて外角低めにストライクを投げるつもりなのだろう、当然片倉もそう予想する。ストライク! しかしバットはふらなかった。片倉はじっと待つ。スリーボールツーストライク。さあ勝負球は…… インコースギリギリの球が来た。片倉はすっと後ろに下がりながらその球を叩いた。まるでど真ん中の球を打ったフォームで打ち返した球は投手滝川の顔面目がけて飛んで行く。

咄嗟に顔の前にグローブ出した滝川だったが、衝撃を顎に感じたあとのけぞるように倒れてしまった。球はそのまま二塁手の頭を越えていった。ヒットだ。投手滝川はまだ起き上がれない。タイムがかかってトレーナーとコーチ、ドクターが駆け寄った。鎧とマスクが外されて、ドクターが状態を診る。半身を起こした滝川は一塁上にいる片倉をにらみつけながら立ち上がった。観客が拍手を送った。どうやら大丈夫のようだ。

5番の白石がバッターボックスに入って、試合が再開された。捕手のリードが外側に偏っている。それでも白石は落ちる球を空振りして三振。6番原田に打順が回った。その初球を叩いた打球は三遊間転がって行く。蒲生三塁手が横っ飛びで捕らえゲッツー狙いで二塁に投げた。片倉がガチャガチャと甲冑の音をさせながら二塁に走って行く。そしてものすごい勢いでヘッドスライディングを見せた。捕球して一塁に投げるつもりの二塁手が恐怖を感じてよけながら一塁に投げた。一塁アウト。しかし二塁は塁上で捕球していないのでセーフだった。他の選手ならともかく片倉が相手だ。二塁手にしてみれば賢明な判断だったろうが、観客が「臆病者!」とやじった。

ツーアウトにこぎつけた。あとは下位打線だと滝川がほっとしたのだろうか。伊達のルーキー支倉に三塁の頭を越すヒットを打たれた。際どくフェアゾーンに落ちた球はそのあとファールグランドを転がってタイムリー二塁打だ。伊達は後が続かず1点のみ。

さあ、織田も4番からの重量打線だ。佐々の長打力、池田の意外性、蒲生のしぶとさと個性も違って相手投手も大変だろう。トップバター佐々は気負ったか、大きなファールを2回打ち上げたあと空振り三振。池田も初球のゆるい球を打ち損ねてキャッチャーフライ。蒲生が粘ってフォアボールで1塁へ。伊達の投手桑折が7番池田に死球をぶつけたが、そもそも試合中のラフプレイが売りなので、両チーム入り乱れての乱闘には到らない。

さあ、伊達チームは悩んだ。8番にいるが前田は4番でもおかしくない長距離を打てる打者だ。次の打者は投手の滝川だ。バッテリーは警戒しながら結局敬遠ぎみの四球、二死満塁になった。滝川はマウンド上でダウンさせられた仕返しとばかりに初球をものすごいスイングで空振りした。来た球と全然合ってない。そして二球目、また空振りだ、しかしバットが投手目がけて飛んで行く。観客がどよめいた。バットは投手桑折が逃げて二塁手小梁川が拾った。小梁川はそのまま打者の傍まで行き、何事かささやいて滝川に渡した。ラフプレーのこのリーグに合わないシーンだ。だが、滝川の様子がおかしい。顔を怒りで真っ赤にし、守備位置に帰ってゆく小梁川をにらみつけた。結局滝川はとんでもないボール球を振って三振。満塁と攻めながも無得点に終わった。

織田の投手滝川は、当然なことのように伊達の投手桑折の身体目がけて投げてきた。しかしそれを予想していたのだろう桑折は、最初から逃げる姿勢で4球逃げまくり四球出塁。織田の投手コーチがマウンドに行き、内野手も集まり、滝川をなだめる。当然仕返しはオレ達がやるからと言ったのだろう。滝川が笑顔を見せて頷く。そしてゆるい球を効果的に使い1番からの伊達打線を凡退させた。

織田の打順は1番からの2巡目、ピッチングコーチから助言を受けていた桑折は、まるで思い通りの所に行かないなあという素振りで、荒れ球を装い、ここぞという時にぴたっと決めて1番2番を打ち取った。3番柴田は、それを察したようだ。しかし球が読めない。スリーツーとなってからが勝負だと心に決めた柴田は、そのスリーボールツーストライクからの外角低めの真っ直ぐを思いっきり叩いた。打球は低い弾道ながらホームランとなった。結局1点でこの回は終わったが、1対1の振り出しに戻った。

作品名:戦国野球 作家名:伊達梁川