キツネのお姫様
それどころか、棒で追い払おうとしているではありませんか。
それでもお姫様は、
「これ、わらわが姫じゃ。わからぬか」
と怒鳴り続けます。
とうとう家来の一人が刀を抜いて、お姫様に突き付けました。
「我らをからかう気か? そんな薄汚れた姫がどこにある? さっさと行かぬならば、この場で手打ちにいたすぞ」
さすがにこれにはお姫様も腰を抜かし、逃げていきました。
こうしてお城に上がったキツネの親子。母親はお姫様として、子供は襟巻きとして暮らしました。
母親ギツネは家来として猟師を呼び寄せ、側に置きました。
そして猟師以外、人が見ていないところでは、こっそりとキツネの姿に戻り、仲良く暮らしたそうです。
(了)