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　私たちの結婚生活は、すぐそばを小川が流れる、小さな一戸建ての貸家からスタートした。彼、仁(じん)ちゃんは優しい人で、菜緒のこともとっても可愛がってくれたし、菜緒のためにも、自分の子供はいらないとまで言ってくれた。
　結婚して半年経った頃のある日のこと。急な知らせを受けて仁ちゃんの実家へ行った。すると、信じられない現実が待っていた。あんなに幸せそうだった義姉が自殺したのだ。私にとっては三人目。拓斗、母、そして義姉。すうーっとあの記憶が甦って来る。――私の周りの大切な人がみんな死んでしまう。
　義姉の自殺の原因は仁ちゃんのお兄さんの浮気だった。義姉はそのことを知った途端に母家のそばの倉庫に駆け込み、畑で使うために用意してあった農薬を一気に飲んだらしい。どんなに苦しかっただろう。あんなに愛し合っていると思っていたのに……。私の心が見えない不安に揺れた。
　すぐに救急車が呼ばれ義姉は病院に搬送された。しかし手当ての甲斐もなく、義姉はそのまま逝ってしまった。ショックだった。病院のベッドで亡骸になってしまった義姉の身体を揺すりながら、
「何でー　何でなんよー　何でなんよーー」と、大声で泣いた。
　悔しかった。私たちの結婚を、あんなに応援してくれていた人なのに……。
　多分この衝撃的な事件が、その後の私の病気に大きく影響したのではないかと自分では思っている。
　それから半年も経たないうちに義兄は再婚した。相手はその時の浮気相手の人だった。つまり本気だったということなのだろう。だからこそ義姉は、あんな風に急いで逝ってしまったんだろう。
　
　それから間もなくの事だった。私にその症状が表れ始めたのは……。