母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~
たかだか家の裏に干した洗濯物を取り込むだけで息切れがした。心臓も、いつもの数倍の速さで脈を打つ。それでもまだその時点では、大して気にしていなかったのだが……。
ところがそれから少ししたら、今度は手が震えるようになった。考えてみれば、最初の動悸がする頃から、妙にイライラするようになった。どちらかと言うとおっとり型の私なのに、小さな事がやけに気になる。
いつも時間通りに帰って来る仁ちゃんが、五分遅れるだけで不安になり、つい会社に電話してしまう。もちろんその時間には仁ちゃんはもう会社にはいないから、他の人が応答してくれる。しかし一回二回ならともかく、そんなことが続くと、さすがに優しい仁ちゃんも怒った。当然喧嘩になる。一度喧嘩をすると、今度は何でもない小さなことが、どうしようもなく嫌なことに思えてきて、そのことでまた喧嘩をする。もう限りなく続く喧嘩の連鎖となる。そばで見ている菜緒は、当然ながら不安気にしている。子供の前で喧嘩などするべきじゃあないことなど、もちろん分かっている。それなのにどうしようもなく繰り返してしてしまう喧嘩。あとでそれが病気のせいだったと分かっても、その時はもうあとの祭りだった。
作品名:母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~ 作家名:ゆうか♪