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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

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 そして実家に帰った私には、また新たな生活が始まった。
 まず仕事を探さなくては……。とりあえず職安〔今のハローワーク〕に行った。なかなかこれって思うような仕事がない。
 そんな時、中学時代からの親友から連絡があり、彼女のお父さんが任せられている店でホール係を募集してるという。彼女のお父さんとは私も何度も会っているので、形ばかりの面接に早速出かけた。もちろん即採用となり、次の日から働くことになった。
 そのレストランはボウリング場の中にテナントとして入っている店で、平日は、ほとんどが毎日来る常連さんか、ボウリング場のスタッフくらいのもので、はっきり言って暇だった。一緒に働くのは親友の叔母さんだったから、これまた気兼ねがない。正に職場としては最高だった。親友も時々顔を覗かせてくれたり、私の仕事が終わるのを待っていてくれて、そのまま一緒に遊びに行ったりもした。二十一歳の楽しい青春真っ盛りの時期だった。

 それでも月に一度、五日の日には拓斗の墓参りを欠かすことはなかった。ただその墓地には水道が引いてなかったので、大きなペットボトルに水をたっぷり入れて、買ったお花やお菓子と一緒に持って行くようにしていた。それが唯一、もうこの世にはいない拓斗との悲しいデートだった。しかしそこへ行くと、必ずあの日のことを……拓斗が逝ってしまったあの日のことを思い出してしまうのだ。
 どうして私に何も言わず逝ってしまったのか。
 なぜ独りで逝ってしまったのか。
 どうして私が同じ方法で後を追えるようにしておいてくれなかったのか。
 涙がこぼれて止まらなくなる。そして涙に翳んだ目で、拓斗に話しかける。
「拓斗、私、まだ生きてるんだよ。いつになったら拓斗のそばへ行けるの?」と。
 その時でもまだ、私は自分が生きていることが恨めしかった。
 拓斗の墓参りの際には、もう一つ忘れてはならない大事なことがあった。
 それは母のことだ。私は母のお墓がどこに在るのか知らない。だからお墓参りに行ってあげることができない。仕方がないので拓斗にお願いする。
「拓斗、もしお母さんが天国に行けないで迷っていたら頼むね。お母さんを天国に連れて行ってあげてね。そして私が元気でいると伝えてねっ」
 必ずそうお願いして帰るのだった。