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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

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 拓斗と母は亡くなったけれど、母から貰った命は私の中で確かに生きていた。
 一度は捨てようとした命だけど、勝手には捨てられないものだと知った。

 京都から帰郷する車のハンドルの横では、やっぱり拓斗が笑っていた。しかしその笑顔は、来る時のそれとは少し違って見えた。
『遠くで笑ってる……』そんな気がした。
 一年という時間はそれなりに私を冷静にし、新しい道を指し示してくれたようにも思えたが、ただ『私の大切な人はみんな死んでしまう』その思いだけは消えずに残っていた。
 途中で休憩しながら、丸一日かけて実家に帰り着いた。出迎えてくれた父は、以前と変わらず元気そうに見えた。取り合えず運転で疲れた身体をしばし休め、その後おもむろに父に訊ねた。
「お父さん、具合悪いって言ってたけど、どうなの? どこが悪いの?」
「ああ、そのことか。今は何ともない」
「はあー? それどういうことよ!?」
「いや、お前が一人暮らしをしようとして、家を探してただろ?」
「なんで知ってるの?」
「そりゃあ分かるよ。狭い所だもんなあー」
「ええぇー? じゃあ、あれは嘘だったのぉー!?」
「まあな」
「そりゃないでしょう! 私、仕事辞めて来たんだよぉー」
「仕方ないだろ。おじさんが面倒見切れないって言うから……」
「だからってぇーーーー!」
 すっかり私は父の策略に落ちて実家に戻されたのだった。