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母から私 私から娘へと ~悲しみの連鎖~

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 ――さて、レストランの仕事にも次第に慣れてくると、常連さんとも軽口をたたくようになる。その中の一人に二十七歳の独身の男性がいた。
 彼の名前は石川典生といって、親友のお父さんが勤める会社系列のクラブでバーテンダーをしていた。いつもお昼少し前にやって来て、ここのレストランで、朝・昼を兼ねた食事をするのを日課にしていた。毎日顔を合わすので、私と彼とはすぐに親しくなった。
 夕方、私は仕事が終わると彼の働く店に行き、オープン前のクラブで、彼の作ってくれるカクテルを飲むのが楽しみになった。次第に彼のアパートにも行くようになり、私は彼の洗濯物を洗ってあげたり、食事を作ってあげたりした。
 そうこうする内に、いつしか自然に結ばれて、私たちは恋人同士になった。
 しかし私は、まだ結婚は考えていなかった。それなのに父は余計な心配をして、石山のおばちゃんに頼んで、私たちを結婚させようと計った。
 私はまたしても父の策略にはまって、彼と結婚してしまった。ただ何の準備もしていなかったので、私たちは普通の結婚式はせず、二人だけで新婚旅行を兼ねて出雲大社に行き、そこで誰にも祝福されることもなく、淋しい二人だけの結婚式をあげた。父の策略とは言え、私たちはお互い好き合ってはいたので、新婚生活はそれなりに楽しいものだった。彼は優しかったし、私を愛してくれているようだった。私も彼を愛していると思っていた。

 しかし破局は思いのほか早く訪れた。
 間もなく二十二歳になろうとする私には、結婚がどういうものか全く分かっていなかったのだと思う。二十三歳で長女を出産したが、その娘が生後十カ月の時に離婚した。わずか三年間の結婚生活だった。それによって『結婚イコール生活』という現実を、嫌という程味わった。