続 帯に短し、襷に長し
男袴と女袴
Q:女袴を男袴に仕立て直せるでしょうか?
A:できないことはないですが、手芸の域で考えるとできません。
なのに、簡単にできます。と、きっぱり言い切ってくれた人がいた。
いや。無理だって。
男物には、腰板という、後ろの腰に乗っける台形の硬い板が入る。
昔は、ほんとうに板が入っていたが、今は、板は重いし固いのでボール紙を入れている。
女物の後ろひもは、2寸幅一丈近い長さが必要だが、男物は1寸幅で2尺に足が生えたぐらい。
それだけが違うと、件の回答者はおっしゃるが、そもそも、男物と女物では、後ろの作りが全く違う。
脇の縫込み、ここを袴では相引というが、その寸法も違う。男物の後ろの脇明き、つまり、相引の上の開いた部分だけど、これを投げという。
女物は、前も後ろも笹ひだを取るが、男物の後ろは、投げだ。
これを間違えると、なんとも女々しい袴が出来上がる。
男は、しゃっきりした折り目正しい袴がよろしい。
さらに、斜めの三角に始末する投げの都合で、ひだの取り方が全く違う。
もう一つ、決定的に違うのは、男物は前の裾を中心にいくにつれてだんだん上げてひだを取るが、女物は、まっすぐ、ひだスカートになる。
理由は、男物は後ろの腰板をがっちり帯に乗せて着るので、後ろが引っ張りあがるのだ。その分、前も後ろ上に引っ張られて着用するとちょうど裾がまっすぐに見える。
これを、前を上げず、まっすぐに仕立ててしまうと、前裾が垂れさがった状態で着付けが上がる。すると、足さばきも悪くなり、裾を踏んづけるという悲劇が起こる。
そこまで厳密に考えなくてもいいとしても、後ろの形態が違いすぎるので、大変不格好になる。
体験として、着てみたいだけなのかもしれないが、それにしても、あまりに不憫だ。
何も知らない人には、出来るだけ正確な知識を授けてほしいと、切に願う。
そして、何も知らない人は、出来るだけ、たくさんの情報を集めてほしい。それで混乱することもあるだろうけれど、一つ一つ精査していけば、おのずと、答えは見えてくるはず。
早合点せず、あきらめないで、調べることをお勧めするよ。
(了)
作品名:続 帯に短し、襷に長し 作家名:紅絹