続 帯に短し、襷に長し
振りは何故ある!?
女物の着物のお袖には、手首側の「袖口」と袖付けから下の「振り」がある。この振りは、袂ともいい、「袂を分かつ」という慣用句の語源にもなっている。
さて。この振り。何故、開いてるの? と、聞かれても、ワタクシの専門は仕立てであって、着物の由来とか歴史とかそういったものは、服飾史や文化史、風俗史などの専門家に聞いたほうが早いと思うのですよ。
それでも、ちょっと調べてみました。
ちょっとですよ。ちょっと。
すると、体温調節説と着付け説の二つが浮上してきました。
大雑把にその歴史を辿ってみると、もともと、着物は男物も女物も、対丈のお袖は袋状だったのです。そう。振りではなく、人形です。そのうち、小袖を着て内掛けを着るようになり、その内掛けをからあげて着るようになり、それがスタンダードになって、現在の外上げ(=からあげ)をして着る着物になったわけです。
男物の着物を羽織ってみたことがあるなら分かりますが、男物の着物というのは、繰り越しては着用できないようになっています。
蛇足ですが、なんで男物の着物を羽織ったことがあるかというと、単純に身丈確認です。対丈の着物は着丈といいますが、自分と同身長ならどのくらい、痩せてる人はどのくらい、と、大体の感触を掴むために出来上がったときに羽織ってみます。特殊な寸法の着物も羽織ってみます。ものっすごい洒落た着物も羽織ってみます。びっくりするほど高価な大島も羽織ってみました。緞子織りの特注雨コートも羽織ってみました。いろいろ、悪戯心にやってみています。閑話休題。
第一に、繰越がついていないので、後ろに引っ張る加減がいつも以上に必要なこと。それでも、腰周りに遊びがないので、いくら引っ張っても戻ります。
第二に、袖付けが長く人形が開いていないので、後ろに引っ張った時のタメがないこと。
つまり、生地に余裕がないので、収まりがつかず、どうしても戻ってしまうのです。
内掛けをからげるようになった時に、きっとその辺を考えたのでしょう。
後ろに繰って、あげをとって着ると、お袖も後ろに引っ張られます。紙袋なんかを想像してもらえば分かると思いますが、袋状のものの片方を引っ張ると変に攣れます。
また、同時に身八つ口も開けないと着付けの際になかなか面倒です。
作品名:続 帯に短し、襷に長し 作家名:紅絹