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12ピースのパズル

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昼休み、彼女の携帯電話にメールが届いた。
『今夜の女子会決定!香屋ドウフにて五時ね。あ、十七時よ』
学生時代の友人からだ。
メンバーは、今年初詣に出かけた二人とメールの友人、そして卒業後すぐに結婚した
友人と彼女の五人。
彼女が店に着いたときには、もうすでに四人はそこに居た。
「あー来た来た。やっぱり最後だったね」
「いつも通りでなんか懐かしい」
「私は、旦那に送ってもらったから早過ぎちゃった」
「えーそれって、なんか自慢?余裕って感じー。ねぇー」
変わりない笑いとおしゃべりは、すぐに花開いた。
「ねえそれでどうした?あれから仲直りした?」
彼女の話題に振られた。
「う?別に何も無いわ。それに感動なんてわかんないわよ」
「ひとつも?ひとつぐらいあったでしょ」
「もちろん楽しいことはあったと思うけど、それがその感動になるのかって」
「え、なになに?」
結婚した彼女に友人が彼女と彼の話をした。
「えーそれって何だか修行みたいね」
「修行?」
「花嫁修業ではないけど、恋人として素敵になって欲しいってことでしょ」
「どうしてそうなる?」
「別れるとは言われたけど、一年、期限は今度のクリスマスイブまでって」
彼女以外の意見は半々に分かれた。
どちらにしても、興味津々、おいしい酒の肴になっていく。
「も、もうこの話はやめー!ほらみんなは?あ、二人目の赤ちゃんはまだ?」
「やっと母乳が離れたから、今のうちにお酒も楽しまないとね。さあ飲むわよー」
共通の話題から、いつしか個々の話になっていく。
それぞれ違う日々を送り始めたんだと改めて彼女は感じていた。
だが、彼女には、みんなに話したい話題がほとんどなく、頷いて聞いているばかりだった。
女子会のお開き。来年の時には雛人形のように高砂に上がりたいね…と別れた。

今月も半ばを過ぎ、事務員さんがひとり退社、男性の社員が部署の異動の辞令があった。
月末に送別会をする幹事を頼まれた。
彼女は、インターネットや情報誌で店探しをしていた。
「今日は残業?」
「いいえ、送別会の店を検索しているところです」
「あーそっか。ご苦労様。それで見つかった?」
「それが…あまりわからなくて。みなさん何がいいのかしら」
「そうだね。誰に合わせるかだけど、会社帰りで人数が入れる店を探してみたら」
男性社員が彼女のパソコンを覗き込むようにしながら話した。
普段こんなに会話をしたことはなかった。
内心(あまり近づかないで)とも思った。
「ココなんかどお?」
「どれですか?」
彼女が操作するマウスに横から手を添えた。
「これこれ。わりに近いし、新しいからみんなも行ったことないと思うから」
「あ、それに宴会OKですね。チェックしておきます」
男性社員は、腕時計に目をやり言った。
「今から行ってみようか。腹も空いているし。ね。」
彼女は、(強引ね)と思いながらもその男と店の下見に出かけた。
おいしい料理と会場としても満足だったふたりは、すぐに予約を入れた。
後日行われた送別会は、とても良いものとなった。
「あの。ありがとうございました。皆さんにもお疲れさまと言っていただけました」
「そう。良かったね」
彼女は、酔いに頬を赤らめ嬉しそうに微笑んだ。
作品名:12ピースのパズル 作家名:甜茶