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12ピースのパズル

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明日は約束の日。
彼女は、パズルの箱を取り出した。
箱のどこにも、完成の絵柄は描かれていない。
(どんな絵ができるのかしら?一度くらい作ってもいいわよね)
彼女は、ピースを並べ始めた。ほんの数分で完成できるものだった。
「あら?ここのピースが無いわ。不良品かしら」
可愛いエンジェルの絵が出来上がっているのに ひとピースが無い。
彼女は、部屋を探したし、バッグの中も全部出してみたが見つからない。
「意地悪された!?」
彼女は、パズルを崩し、箱にしまった。

翌日、待ち合わせの場所に彼女は出かけた。
早く、こんな意地悪なパズルを突き返し、帰って来ようと思った。
店には時間よりも早く着いた。
店の扉を開けるとオーナーが両手を広げて迎えてくれた。
「メリークリスマス。いらっしゃいませ。お待ちしていました」
「少し早かったかしら」
席へと案内してくれた。
それからしばらくして彼が席にやってきた。
「今夜は、素敵だね。君のほうが先に来てくれたなんて」
「……」
「座ってもいいかな」
「どうぞ」
まもなく前菜が運ばれてきた。
「食事の前に…」
「うーん、僕はお腹空いているんだけどな。食べてからじゃ駄目なのかな」
「私には、コレを食べる資格があるの?パズルでき・・・」
「別に資格は要らないよ。美味しい料理は冷めないうちに。あ、コレは冷製か、ははは」
彼女は、くすっと笑った。
「じゃあ、食べてから。私もお腹空いてるから」
彼と彼女は、無言で食べ始めた。
最後のデザートを待つ間に彼女は、パズルの箱を彼の前に出した。
「できた?出来てないみたいだね」
「できないわ。だって足りないのよ、コレ」
「…気付いたんだ。いつ?たぶん昨日くらいだよね」
彼女は、見透かされたことに俯いたが、すぐ彼を見返した。
「ええ。知っていたの?わざとなのね。酷い」
「ごめんなさい。はいコレをどうぞ」
彼が差し出したのは、リボンの結ばれたクリアなケースにしまわれたパズルのピース。
「メリークリスマス」
「私は、きっと変わっていないわ。今からコレを貰ったって駄目なの」
彼は、首を傾げて彼女を見た。
「感動なんてわからない。みんなが良いって言っても私は違う。何でもないことが
可笑しかったり、勝手な勘違いをしていたり…」
彼は、彼女の話すのを聞いていた。
「別れられても仕方ないのよ。貴方は正しい」
「それが、君の気持ちなの?」
「うん。別れる。一年待ってくれてありがとう」
「そう。あ、君はデザート食べてから席を立ってください。僕は帰ります」
そう言い残し彼は席を立って、店を出て行った。
作品名:12ピースのパズル 作家名:甜茶