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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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不倫ホテル

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1週間後、また僕達は同じ部屋で、同じ夕陽が落ちる時間にカーテンを開けたまま猛獣になった。
まさか、このパターンが翌週まで続くとは思わなかった。

 紗枝子の顔が前より随分柔らかくなってきた。
終わった後に僕の腕の中で眠る紗枝子は、憑き物が落ちたような温和な顔をしていた。
そして、決定的に前と違う所は、僕の顔をじっと見つめて優しい眼で笑う所だった。
それまでは僕をただの不倫の男だと見ていたのだろうか、今はちゃんと僕を見て笑ってくれる。
ようやく僕が彼女に受け入れられたような気がした。それはしぐさでも分かった。
体を重ねあうことで、心のバリケードがなくなったのであろうか。
それが遅いのか早いのか、普通なのか分からないが、紗枝子が僕を心の中に入れてくれた事がうれしかった。紗枝子自身から気を許したという言葉はなかったが、僕がそう感じていたことは確かだ。
赤い部屋での情事は不倫という罪を背負っているが、愛し合うのに不倫とか道徳とかそんなものは関係なかった。好きだから抱き合う。その1点で結ばれていれば十分なのだ。


幸せな時間は続かないと人は言う。
また
辛い時間も長くは続かないと人は言う。
だけど
幸せな時間が濃いほど、辛い時間もより苦しくなる。
いつまでも幸せでいられるのは、時間を止めることしかないのだろうか。
いっそ自分も消えてなくなりたいと思ったのは、次の週だった。
不倫の終幕だった。



作品名:不倫ホテル 作家名:海野ごはん