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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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妖狐

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「要らないわ。寝ぐらに帰れば拾ったものが幾つもあるもの」
「じゃあこれは」
 私は小さな折り畳み傘を取り出して拡げて見せた。それとは別にカッパを持っているので、この後雨が降っても困る事は無い。
「狐はこうもり傘は差さないの。蛇の目の綺麗なのなら貰っても良いけど。それより今はちょこれーとよ。あたしはちょこが大好きなの」
 一瞬女の目に赤い炎が見えた気がした。
「いや、しかし――」
「折角良いものを見せたのに、ちょこもくれないなんて。化かして殺して奪ったって善かったのに……」
 それを聞いて私は縮み上がった。
「いやそれだけはご勘弁を。チョコレートは差し上げますから、命ばかりはお助け下さい」
 私はリュックから板チョコを出し、両手に持って捧げた。
「あら。本当にくれるのね。全部貰っても良いの?」
 嬉しそうに呟く女は一層妖艶な笑みを浮かべた。
「はい。もう、これ全部差し上げます。なんなら今度来た時にはもっと沢山。油揚げも付けますから」
「油揚げは要らない。間に合ってるから」
 狐女は私からチョコレートを取り上げると、楽しそうに包み紙を剥がしてチョコレートを割り小さな欠片を口に放り込んだ。
「やっぱりちょこれーとは美味しいわ。このちょこは特に美味しい気がする。これって特別なのかしら?」
 確かにそれは戴き物の舶来の品だった。
「ええ、戴き物なのでなかなか自分では買えないものです」
作品名:妖狐 作家名:郷田三郎(G3)