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『3』の欠落

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日曜日がやってきた。
本日は昼頃にお数字さんがわざわざ単身赴任のアパートにやって来るという。
高見沢は約束通り、昨日から三鞭酒/苦労和三/三度一致/三鳥ビールを買い揃えた。朝からテーブルの上に並べた。

こんな気遣いもすべて数字の『3』を取り戻したいため。
しかし、どうもこのお数字地蔵が気に食わない。一泡吹かせてやりたい。

ピンポーン。
昼前にやって来た。
恐る恐るドアーを開けてみると、御影石風の数字地蔵のオッサンが立っていた。

しかし、驚いた。オッサン一人ではなかったのだ。
ヒラヒラとした羽衣を身に纏った女性が高見沢に会釈を送ってくる。
「どこかの飲み屋のお姉さんかな?」
高見沢がそう訝(いぶか)っていると、お姉さんが挨拶してくれた。
「初めまして、一郎君、私、お数字観音よ。数字の欠落じゃなくって、数字の貼り付けが得意なの、よろしくね」

高見沢は目を疑ったが、ここはオッサンと二人で、単身赴任のアパートでの宴会では息が詰まる。色気ある観音さまが現れて、何はさておきホッとした。


作品名:『3』の欠落 作家名:鮎風 遊