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『3』の欠落

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高見沢がこんな釈然としない気持ちを持ち始めたのは、1ヶ月ほど前のことだった。
あれは悪友たちとゴルフに行った時のこと、その日のスウィングは実にスムーズで調子が良かった。
珍しくパー3のショートホールでは・・・・・・すべてナイスオン。ほぼパーが確定されている。

しかし、そんなパー、つまり『3』が一つも取れないのだ。
「これって、一体どうなってんだよ!」と気を狂わせた。だが、これは自分の腕前の未熟さと素直に、いや無理矢理に自己納得させた。

それからのことだった。
1週間明けての日曜日、単身赴任の時間を持て余し、気晴らしにと競馬に出掛けてみた。そしてこれはと思うレースに、本命の3枠の馬にちょっと大きく賭けてみた。
しかし、結果は見事の落馬、3枠が飛んでしまったのだ。
「なんで相棒を落としてしまうんだよ!」
高見沢は騎手を乗せずに、それは美しい勇姿で、颯爽とゴールを走り抜けて行くサラブレッド馬に叫んでしまった。

それから十日後のことだった。
いずれにしても今までのゴルフも競馬も、それらは遊びの範疇。だが、これはちょっとシリアス。そう、それは業務内のオフィスでの出来事だった。

緊急案件が生じ、3階の会議室に向かおうと勢いよくエレベーターに乗り込んだ。
しかし、しかしだ・・・・・・3階のボタンを押そうとしたが・・・・・・ない!
そう、『3』と表示されてるはずのボタンが消滅しているのだ。

「え、え、えっ! これって?」(汗、汗、汗)
高見沢は呻きながらエレベーターから降り、仕方なく階段を使った。

そして今日の出来事。
会社の帰りに立ち寄った行きつけの居酒屋、いつも通り刺身三種盛りを注文しようとした。しかし、これが・・・・・・ないのだ!

「なぜ、ないんだ? なぜ? なぜ? なぜ?」


作品名:『3』の欠落 作家名:鮎風 遊