『3』の欠落
『3』の欠落
「ちょっと何か変だなあ」
高見沢一郎はこんな独り言を呟きながら、単身赴任のアパートへと帰って来た。
初夏の熱が籠もった部屋。おもむろに明かりを点け、まずはよたよたと冷蔵庫へと歩み寄り、扉に手を掛けた。そして冷え切った缶ビールを取り出し、ここは命蘇生のためか、グビグビと。
とりあえずこれで一息入れて、その後、つま先で扇風機のスイッチを押し、散らかったテーブルの前へとドサッと座った。
「ふうー」
高見沢はもう一度大きく息を吐いた。
「二度あることは三度あるか、確かにそうかも知れないが、実際はそんな気楽なものじゃないよなあ。これって一体どういうことなんだろう?」
誰もいない部屋で、一人小首を傾げている。