1977年のカーラジオ
バイトの帰り、ビートルのカーラジオからビリージョエルの「素顔のままで」が
流れてきた。ニューヨークの香りがする都会的なラブソングだった。
Just the Way You Are
君にはいつだって
いままで通り そのままの君でいてほしい
僕が君を信じるように
僕を信じてほしい
愛してる ずっと・・・
心から誓う
これ以上深くは愛せないくらいに
そのままの君を愛してる
凄く感動した。
ちいに聞かせたいと思った。
「ねえ、『素顔のままで』という歌知ってる?」
「知らない」
「すごくいいんだ。録音して聞かせてあげるね」
僕はその日、カセットテープデッキを持ち出し、ラジオから流れてくるのを待った。
ちいが先に寝るねと言った後にも、ずっとその曲が流れてくるのを待った。
秋の少し冷たくなった空気が僕達ベッドのまわりを囲み、二人包まった毛布が
温かくて気持ちよかった。寒い地球上でも僕達二人さえいれば、温かく生きていけると思った。ちいの温もりにうとうとしながら、あの曲を待った。
そして、ようやく予想通りラジオから流れてきた。カセットの録音ボタンを押す。
Don't go changing, to try and please me
You never let me down before
Don't imagine you're too familiar
And I don't see you anymore
I wouldn't leave you in times of trouble
We never could have come this far
I took the good times, I'll take the bad times
I'll take you just the way you are
ちいの寝息を聞きながら、録音した安心感で僕も寝入ってしまった。
次の朝が楽しみだった。
作品名:1977年のカーラジオ 作家名:海野ごはん