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紗の心

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その人とは、言葉の通うだけの気持ちではいけないと、なんとなく思い込んでいた。
『あの方』への対抗意識とか、勝った負けたでない、その人との心の交流を求めたかった。
逢いたいときに逢えないその人の気持ちを私も少しわかったからかもしれない。
逢えないときに、相手を想うのは、結構つらい。
たとえ、相手が自分のことなど想いもしていなくても、相手を想うだけで、心が安らぐ
ことができれば、幸せでいられる。
そんな想いを得たいがために あえて私は言葉にしない。
今この時、瞳が 仕草が、気持ちを見せてくれるならそれを得たときだと信じて。

着物を着ているせいか仕事のせいか、背筋の筋肉がピンとしている。
そのまま腰へとくびれに沿って撫でていく。
私は、両腕の中にその人を包んだ。
その人の頭を私の胸に押し当てた。見上げるその人を見つめ返すだけの私。
その人が、私の胸元に唇を付けてくれた。
気持ちが通じた気がして嬉しくなった。また見上げるその人に少し笑みを見せてしまった。
その人は、キスをしてくれた。チュッと音を立てキスをする。
久し振りの感覚は気持ちよくくすぐったい。
裸の胸を合わせる。
鼓動が聞こえるわけではない。
温かい素肌が、より熱く感じる。いや実際の体温は変わらない。
きっと高揚した気分がそう感じさせているだけだろう。
心地よい温もりをこのまま感じているのも悪くない。
と、次へ進めない自分への言い訳が大いに含まれている。
その人が、凭れたのか、押したのか、わずかな重みが掛かった。
私の意識が行動に変わった。

つかの間の戯れだったがお互いが求めるものをしっかりと感じた。

作品名:紗の心 作家名:甜茶