紗の心
ふたりの体をソファから広めのベッドへと移した。
その人が胸元に巻いていたコットンストールを外した。
多めに開けていたボタンのせいで胸の谷間がすぐ見えた。
ブラジャーのレースが見え隠れする。
私の下でベッドに横たわるその人は、「着物のほうが良かったですか?」と私を見上げる。
「いや、あんこがあればいいよ」
「佐伯さんったら、紗希は和菓子ですか?ふふふ羽二重か、ねりきりか、
それとも薯蕷(じょうよう)ですか?」
「紗希さんが笑ってくれて良かった。ごめん。すぐに分かってあげなくて。
どうも頭が固くなってしまって」
その人の手が、私の髪を撫でる。
「大丈夫。佐伯さんの髪の毛柔らかくて気持ちいい」
その指先が頭をコツコツと弾いた。私は、その手を取り、掌にキスをした。
ぎゅっと握った手を上から握った。
その手は、その人のボタンを外す。
すでに一度は、見た裸体だが、先日のそれとはまた違った感覚が私の脳裏を走る。
途中で、手を止められない。止めてしまったら、その後に躊躇ってしまうかも知れない。
私は、多少乱暴な扱いになろうと その人の衣服を取り去った。
横たわる裸体に見惚れた。
その人の目が私を見つめる。
やんわりと優しい。唇を形良く結んだまま黙っている。
この何処に触れたらいいだろう。私の手が迷う。
私は、自分も同じになることにした。
本当は、その人の手で脱がされてみたい。
しかし、今その手間をさせてしまったら、その人の気持ちがどこかに飛んでいきそうにも思えた。
私が裸になって、その人の横に並ぶまでその人は、天井を向いていた。
声を掛けるのもできないほどに、私は緊張している。
このまま体を寄せたら、その気持ちがばれてしまう。
指先で頬を撫でる。
天井から私へと視線が戻って来た。ほんわか目を細め微笑む。
唇をほんのわずかに触れるだけで離れる。
もう一度、もう一度、そして、触れる間近で触れない。
その人の唇だけが、受け入れるように反応する。
「ん?」と見つめる瞳。
私は、ほくそ笑んで唇を重ねる。その人の唇が拒むくらい激しく唇を重ねる。
ふと、離れる。
ふぅーと大きく息をつくその人。
息を我慢していたのか、できなかったのか。
その息が出終わる前に また私はキスをする。