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紗の心

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「ただいま」
「おかえりなさい」
着替えて、食卓についた。
妻が作った肉じゃがとほどよく冷えたビールが美味しい。

仕事の話は、ほとんど家ではしない。
妻もとくに聞こうとしない。
たぶん、私が面倒くさげに答えるからかも知れない。
私の自由に使える部屋は、最近、ベッドまで入り込んできた。
その理由はふたつ。
(おそらくそうではないかと、私が納得しているだけかもしれない)
ひとつは、私が仕事と称して部屋に篭もったまま眠ってしまうことがしばしばあるから。
もうひとつは、妻が最近始めたパートの仕事で疲れてぐっすり眠るため。
他の理由があるとしても、きっと私は分かっていない範囲の事柄だろう。
私達には、子どもがふたり居るが、上の男の子は社会人3年目、近隣の県だが転勤で
家を出ている。
下も男の子。
まだ学生だが友達と住みたいと部屋を借りて共同生活(ルームシェアとやら)をしている。
今は、夫婦水入らずの生活というものを送っている。
別々の部屋で過ごす時間は多いが、夫婦仲が悪いとは私は思ってはいない。
妻は、私の欲求にも付き合ってくれる。
時には、妻からもそれらしく私を求めてくれている。
自ら告白するのもどうかと思うが、年齢的に落ち着いた行為は、妻を満足させている
のだろうか。
妻の感じる姿は、可愛い。
子どもをふたり生んだことによる体型の変化も多少は気になるところだが、
肌を合わせると安心する。
そして、なんとなく悦ぶポイントは外さない。
体の快感による満足も確かにまだあるが、妻の表情、声や仕草に感じる部分が
大きくなったのは寂しい衰退か?!

あの人は・・・。
あの人は、どんな顔を見せてくれるんだろう。
あの人は、誰にその顔をみせるのだろう。

急に、見えない相手のことが羨ましく、やや苛立ちにも似た感情が私の中に生まれた。

「何か、あったの?」
「えっ?」
妻の声に引き戻された。
「美味しくない?眉間にシワよせて」
「あ、ごめん。美味しいよ。ちょっと考え事、仕事の、んーー」
「いいの。あ、私もお茶しようかな。会社で『お土産』って貰ったお菓子があるの」
「私のことは、これだけでいいから、気にせず、食べればいい」
「崇さんも食べる?」
私のことを名前で呼ぶのは、ずっと変わらない。
私は、なんと呼んでいるだろう。あまり意識したことがない。
「いや、飲んでるからいいよ」
「そう」
私は、早々に食べ終わったが、向かい側で同じ時間を過ごそうと、座ってくれた妻が
食べ終わるまでは待った。
「ごちそうさま」
私は、席を立ち、部屋へと入った。

作品名:紗の心 作家名:甜茶