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紗の心

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ふたりをダブらせたり、比較したり私はきっといけないことをしているのだろう。
だが、心がふたつあるように妻にもその人にもいっぱいの気持ちが溢れる。
都合のいい言い方だが、今どちらかだけではもう一方にも優しくできない。
それほど、この短い時間に、その人の存在が私の中に入り込んでしまったようだ。
その人は、別の人を思っているのに その人の気持ちに入っていきたい。

「でも、どうしたの?ケーキ買ってくるなんて」
当然の質問だ。答えも用意しながら買っている。
「片付けひとりで頑張ったから」
「それだけ?何かあったんでしょ?」
私は、笑みを浮かべたが、それ以上に答えなかった。
「怪しいなー。まあ美味しいから、いいってことで」
妻は、好きなケーキともうひとつのケーキをそれぞれ私分として残してくれた。
「ご馳走さま」

その夜、私は妻を抱いた。
「(妻自身)明日も仕事があるから」
拒んではいたがひんやりした布団の中で肌を寄せ合うと気持ちがほぐれる。
体を抱きしめ、背中を撫でる。背筋に沿って指で伝うと、くすぐったそうに背を反らせる。
ケーキのおかげか、今日は心持ち反応がいいようだ。
暫く、そこで過ごしたが、部屋へと戻って眠りについた。

週末までの数日間はとても長く感じた。
仕事の最中は、意識から消えるときはあるのでまだいいが、ひとりの時間は無性に
会いたく思い浮かぶ。
欲求が溜まっているわけではない。
(そうだ。あの言葉だ。「うちに来て」だの「会いたい」の言葉が気に掛かるんだ。
何があるんだ?と気になるじゃないか・・あと二日。なにやら我慢するか)

(さて、明日のことはなんと言って家を出ようか?)
私は、出かける理由をあれこれ考えた。
先週のように、妻から促されるわけじゃない。
もしかして、一緒に出かけたいと言われたらどうしようかとも考えた。
夜、寝る間際に告げた。
「明日、出かけていいかな?」
「え?じゃあ私もいいかな?」
「・・・」(困ったな)
「高校の時の友達で、ほら結婚式にも出てもらった子。その子と会う約束しようか、
迷っていたの。崇さんさえ良ければ、行ってきたいな」
「なんだ。もっと早くに言えばいいのに。珍しいな、友達に会うなんて。
楽しんでこればいいよ」
「はい。ありがとう」
ありがとうと言われ、少々うしろめたさを感じながら、どこかほっとしていた。

作品名:紗の心 作家名:甜茶