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紗の心

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翌日、私は朝からそわそわしているのではないだろうか?
(そわそわなんて、女性が何がしら待っているようで私の心境とはズレを感じるが・・)
私は、朝食はほとんど取らない。
コーヒーに限らず、飲み物だけ。たまにシリアルを固めたようなものや
昨日残ったサラダなどを、口に入れていくといったところか。
これだけ食べれば「朝食」として充分と思われるが、これも二人の食事の残りを
妻ひとりに押し付けるのが気の毒というところから始まったルールのようなものだ。
今朝は、コーヒーを飲んだだけで出勤することにした。

会社での仕事は、比較的順調だ。
年齢的にも、後輩や部下もできた。
ここは社会に出て2つ目の就職先だがそれを知る人は2、3人しかいないほど、
もうこの会社に長居している。
自らの営業も悪くない。
おそらく、定年を向かえる頃まで、こうして変わらぬ生活を送るのだろうと思っていた。
しかし、何の歯車が狂ってしまったのか、とある誰かの悪戯のコマにされたか、
私自身の隠れた欲望か、いづれにしても私は今、動き出しそうだ。

今日は、営業に出かける予定をせず、内勤で月末のまとめの作業をしている。
先月の成績も、自己評定としてはまあまあといったところだ。
昼は近くの食堂に出かけた。
『お昼のAランチ780円』営業に出ているときの食事の約倍の価格だ。
よく味わっておこう。

午後からの内勤は、腹の膨れもあって、やや眠気もくる。
だがありがたいことに、部下との営業ミーティングをすることとなった。
その為の資料作りから始まって、ミーティングを終えたのは4時を回っていた。
私は、手洗いに立った鏡のまえで髪を撫で付けた。
人に会うわけではない。あの人からの電話がくるのが待ち遠しく、どきどきしていた。
鳴ってもいない携帯電話を眺めた。
(紗希さんはかけてきてくれるだろうか?)
人が入って来たので、急いで仕舞った。別に慌てることなどないはずなのに。
私は、ふと5時と言ったことに後悔した。
まだ、会社にいる時間ではないか。
その人も仕事中かもしれない。
急に焦り始めた。
どこかスムーズに電話を受けていい場所はないかと思い巡らせた。
だが、思いつく所など、手洗いか、備品倉庫か、営業社員の立ち入りそうな場所など
社内にさほどあるわけがないと思った。
結局、内勤時に利用している机の前で、その時を待つことにした。

作品名:紗の心 作家名:甜茶