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サイレント-交叉-

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コツコツコツ・・・
男は、女の姿を探しながら、ゆっくり歩いた。低くアスファルトに響く靴音。
道の先で小さく光るものが見えた。
(あれか?)
待てよ。もし急いで駆け寄って人違いなら変態と勘違いされかねない。
男は、そのまま歩いて近づいた。
その僅かな明かりは、女が携帯電話を開いている明かりとわかった。
どこに掛けるつもりだろうか?それとも掛けていたのだろうか?
女の指がキーに構えている。
やっと女と目が合った。だが、いつもの優しい目ではなく近づく男を斜から眺める。
(やっぱり、待たせたからご機嫌を損ねたかな)
「え、うそ?」
女は、いきなり目の前に来た男に言った。
「本当でしょ」
(そうか、いつもなら車だからな。歩いて来るなんて思ってなかったんだろう)
「嬉しい」
(車で来なかったことがか?)
「どうして?」
「理由がいる?」
「じゃあ理由も聞かない。だから質問もしない。何も話さない」
男は、女が嬉しそうな顔をしたので何も聞かないほうがいいと思った。

作品名:サイレント-交叉- 作家名:甜茶