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サイレント-交叉-

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エンジンを掛ける。
男は、ふと気付いた。男にとっては結構重い。
とりあえず、待ち合わせの場所へと向かう為、車を走らせた。
しかし、女がこれに気付けば、気にするだろうし、一度や二度ではない。
せっかくの想いが冷めてしまう。今日は何となく甘えたくない。
男は、手前の道に車を停車させた。
(どうしようか?今日は会えないと言おうか。いや会いたい。それは素直に思うけど、
男としては、時にはかっこつけていたいしな。ああ、迷うな。
もしかすると、帰っているかもしれない。車を置いて見て来るか)
男は、車を駐車し、坂を下り、角を曲がった。
二筋道を通り過ぎると、そこは、道幅もやや細くなり、この時間は人も滅多に通らない。
まあ、待ち合わせには、見つからずいい場所とふたりは思っていた。
(あれ、結構暗いな)
いつもなら車で通り過ぎる男は、歩いてそれに気付いた。
遠くの景色にライトは浮かんで見えるが、薄暗い道を女の待つ所に向かった。
(いつも、この辺りだよな・・・)
男は、ふと顔の横に現れた陰に驚いた。
(おおっと、植え込みの木か。人でも飛び出したかと)ひとり苦笑した。
誰にも見られなかったことにほっとした。
それにしてもこの通りは数歩離れては、顔の識別も困難かもしれない。
(いつもこんな所に待たせていたのか。あいつも言えばいいのに)
愛しさが込み上げる。今はただ会いたいという気持ちだけが膨らむ。
男は、幽霊、お化けといった非科学的な類は信じてはいない理系を自負している男だ。
がしかし、突然のハプニングには結構小心だ。そうさきほどの木のように。
たぶん、約束の返事を受け取ったわけでもない怖がりの女がこんな所での待ち合わせを
ずっと待っていられるわけはない。だいいち約束の時間は、過ぎている。

作品名:サイレント-交叉- 作家名:甜茶