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サイレント-交叉-

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夕暮れが早くなったせいか、辺りはすでに薄暗い。
営業から戻り、会社の駐車場に入ったとき、胸元で携帯電話が鳴った。
おそらく会社からの連絡だろう。
男は、携帯電話を確かめることなく、事務所へと戻った。
「ただいま戻りました」
声を出し、事務所に入って行ったが挨拶はされるものの、
誰も電話の件は声を掛けてこない。男は、携帯電話の着信を確認する。
(あ、あいつか)
男のいうあいつとは事務員の女性だ。
お互いに好意を持ってはいるのだが、少人数の会社だ。
上手くいっているときは楽しいだろうし、冷やかされても悪くはないだろう。
だけども、お互いにあまりそういう話のネタにはなりたくない。

営業日誌を済ませ、出ればたぶん時間には間に合うだろうと男は、机に向かった。
逸る気持ちと、営業の詳細とが頭の中を陣取りしているようだ。
なかなかまとまらないが、何とか書き終えるまでには至った。
事務所の掛け時計に目を向けると、女から指定された時間は過ぎている。
別に了解した約束ではないが、きっと待っているんだろうなと思った。
メールでも返そうかと携帯電話を開けてはみたが、それよりも会いに行ったほうが早い。
男は、事務所を出て、自分の車に乗り込んだ。

作品名:サイレント-交叉- 作家名:甜茶