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戦友に捧げるブルース

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 腹もようやく落ち着いた頃、一人の若い女が小屋に戻ってきた。この小屋に住む女であることは間違いなかった。痩せてはいたが、自然に育まれた健康さのある女だった。
「まずい。久保田、謝ろうぜ……」
 私は勝手に畑を穿り返し、イモを奪ったことを素直に謝罪すべきだと思った。しかし久保田はそんな私を鼻で笑うと、スッと立ち上がった。そして女の方へゆっくりと歩きだしたのである。
 女は畑を荒らされたことについて、何か言っているのだろう。眉間に皺を寄せて私たちを睨んでいた。しかしその言葉はわからない。
 パシーン!
 湿った空気にもその音はよく響いた。久保田が女の頬を叩いた音だ。女はよろけて尻餅をついた。
「久保田、何をするんだ?!」
 私は慌てて久保田の方へ駆け寄った。久保田はニヤニヤと笑いながら、組みついた私の手を払いのける。
「なあ、笹本……。俺たち、女も知らないよなぁ」
「き、貴様、まさか……?! や、やめろ!」
「俺たちは御国のために精一杯頑張ってるんだぜ。それこそ死にそうな目に遭ってになってな。このくらいの楽しみがなくっちゃあ……」
 久保田がサーベルを抜いた。それは常夏の太陽を反射し、異様な光を放っていた。すべてを圧倒するような光だった。
「キャーッ……!!」
 女の絶叫が響いた。
 久保田は猛獣のように女に飛びついた。そして力任せにその衣服を引き破く。
 女は衣類の下の肌も小麦色に近かった。そして少しだけ膨らんだ、決して豊かとは言えない乳房。その乳房の先端の、干葡萄のような乳首が私の目に焼き付いた。
 女の口から発せられる意味不明の言葉。それは哀願を意味していたのだろうか。そして恐怖に怯えた瞳。
 久保田のズボンが地面に落ちた。女の絶叫が一段と高くなった。その金切り声は私の良心を容赦なく苛んだ。それは苦楽と生死を共にした戦友と言えど、到底許されない行為としか私の目には映らなかったのである。
 久保田はもはや人としての一線を越えてしまった。
 久保田は時折、暴れる女の頬を平手で叩きながら、欲望のままに腰を打ち付けている。その姿は欲望の化身などという生易しい表現は似合わない。もはや悪鬼の姿だった。

 私は固唾を呑んだ。今やサーベルも小銃も久保田の手から離れている。そして久保田は女を犯すことに全神経を集中させている。
(殺るなら、今だ……!)